- 年末調整の意味がイマイチわからない…
- 毎年適当にやってるけど、もしかして損してる…?
- 年末調整について、わかりやすく教えて!
会社員なら必須の年末調整ですが、不安を感じている人も多いと思います。
そこで今回は年末調整の基礎知識をわかりやすく解説します。
毎年経理の人に相談しながらなんとかやってるけど…よくわからないのよね
控除の種類や手続き、流れなどの注意点をわかりやすく伝えていくよ!
年末調整とは?基本を理解しよう
年末調整の目的は、毎月の給与から天引きされていた所得税の「源泉徴収額」と「実際に支払うべき税額」の差額を調整することです。
所得税は、毎月の給与からは少し多めに徴収されていることがほとんどで、年末調整を行なって正しい税額を確定します。
年末調整の定義と目的
年末調整では、会社が税金の清算手続きをしてくれます。天引きしていた税が多い場合は返還され、少ない場合は追加徴収になります。
会社がやってくれるなんて便利♪
家族状況の変化や、いろいろな免除も年末調整で反映されるよ
企業が年末調整を代行してくれるので、従業員の手続き負担は軽減されます。
スムーズに納税が完了する仕組みになっているので便利です。
年末調整が必要な人と対象にならない人
年末調整が必要な人は以下のとおりです。
- 1年を通じて会社員だった人
- 年の途中で入社し、年末まで会社員だった人
- 年の途中で海外転勤になった人
- 死亡や障害などによって退職となった人
- 12月の給与をもらってから退職した人
- パートやアルバイトを退職し、今年の給与所得が103万以下の人
④〜⑥の人は、退職時に手続きが必要です。
また、年末調整の対象にならない人は以下のとおりです。
- 給与所得が年間2,000万円以上の人
- 2箇所以上の会社から給与をもらっている人
- 年末調整提出までに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人
- 年の途中で退職したけど、退職する時に年末調整をしなかった人
- 日本国内に住んでいない人
- 日雇いで働いている人
会社で年末調整を行わない場合は、確定申告が必要です。
年末調整の対象になるか、事前に確認しておきましょう。
年末調整と確定申告の違い
確定申告も年末調整と同様、所得税の額を確定させるための手続きです。所得税の過不足を精算し納税します。
確定申告は会社ではなく、納税者本人がするんだよ!
年末調整は会社員の人が対象ですが、確定申告は個人事業主やフリーランス、または特定の控除を追加で申請したい給与所得者などが行う手続きです。
確定申告では、1年間の収入や支払い、控除を申告します。会社員でも、20万円以上の副業収入がある場合は確定申告が必要です。
年末調整と確定申告の両方が必要な人
会社で年末調整をした人は確定申告の必要はないですが、以下に当てはまる場合は例外です。年末調整をしても確定申告をしなければならないので注意しましょう。
- 給与所得以外に20万円以上の所得がある人
- 複数の会社等から収入がある人
- 給与を賞与を合わせて2,000万円以上の所得がある人
- 転職や退職で会社で年末調整をしてもらえなかった人
- 会社での年末調整を未提出の人
- 災害原免法を受けている人
- 年末調整では対象外の控除を受けたい人(医療費控除・寄付金控除・住宅借入金等特別控除1年目)
災害や事故などで被害を受けた時も確定申告が必要なのね
6箇所以上の自治体にふるさと納税をした人も確定申告してね!
収入と所得の違い
収入とは、売上金額や税金や社会保険料などが差し引かれる前の給与・賞与の額面金額です。
所得は収入から経費を差し引いたものをいいます。
個人事業主は、事業の売上から必要な経費を差し引いたものが所得です。対して、会社員の場合は、給与額に応じて決定している「給与所得控除額」を差し引いたものが所得とされます。
ちなみに、副業をして売上が25万円で経費がゼロの場合、所得はそのまま25万円となるため確定申告が必要です。
一方、同じく25万円の副業収入があっても経費が10万円かかっている場合は、差し引き15万円となります。20万円を下回るため、確定申告の義務はありません。
年末調整の準備|必要な書類とその意味
年末調整に必要な書類は以下のとおりです。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 保険料控除申告書:控除証明書・掛金払込証明書などを添付
- 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書:融資額残高証明書などを添付
- 源泉徴収票
①〜③まではすべての人が対象になります。会社員の人は、書類を会社から配布される場合が多いです。
④は住宅ローンを組んで2年目の人が対象です。1年目の人は確定申告が必要になります。
源泉徴収票が必要なのは、年の途中で入社した人です。前の会社から退職時に発行されているものを提出しましょう。
年末調整で適用される控除の種類
所得税はもらった給与額のすべてに課税されるわけではありません。給与収入から家庭の事情に応じた金額を差し引きし、残りに課税します。差し引きする金額のことを「控除額」と言います。
控除額が多ければ多いほど、税金が減るっていうことね!
手続きしないと控除を受けられないから忘れないようにしよう!
基礎控除
基礎控除は3種類あります。基礎控除を受けられる条件は以下のとおりです。
- 基礎控除:年収2,500万円以下の人が受けられる。最大48万円。
- 配偶者控除:本人と配偶者の所得によって控除額が変わる。最大38万円(70歳以上は48万円)
- 配偶者特別控除:本人と配偶者の所得によって控除額が変わる。最大38万円。
年末調整で基礎控除を受けるには「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という書類を提出します。
基礎控除や配偶者控除、所得金額調整控除が1枚の申告書で記載できるので、チェックしてください。
扶養控除
扶養控除は年間所得が48万円以下の扶養親族がいる人が対象です。給与所得が103万円以下の16歳の子ども(一般扶養親族)がいる人などが該当します。控除額は38万円です。
以下に該当する人がいる場合は控除額が増えます。
- 特定扶養親族(19〜23歳未満の扶養親族):63万円
- 70歳以上で同居している扶養親族:58万円
- 70歳以上で同居していない扶養親族:48万円
生命保険控除
生命保険料控除は、支払った保険の種類によって控除額が変わります。
控除を受けるには、保険会社が発行した控除証明書の提出が必要だよ!
10〜11月くらいにハガキや封書で届くよね
生命保険状控除は以下の3種類です。
- 一般の生命保険料:契約年度で控除額が異なる。〜2012年までは最大5万円。以降は最大4万円。
- 介護保険料:最大4万円
- 個人年金保険料:保険タイプで控除額が異なる。旧個人年金は最大5万円。新個人年金は最大4万円。
保険料控除で注意しなければならないのは、支払い金額の全額が控除額とはならない点です。支払った保険料の一部が控除額になります。計算方法は以下を参考にしてください。
新契約の生命保険料・介護保険料・新年金保険料の免除額計算方法
年間払込手数料等 | 所得税控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払手数料等の全額 |
20,000円以上 40,000円以下 | (払込保険料等×1/2)+10,000円 |
40,000円以上 80,000円以下 | (払込保険料等×1/4)+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
旧契約の生命保険料・旧年金保険料の免除額計算方法
年間払込手数料等 | 所得税控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払手数料等の全額 |
25,000円以上 50,000円以下 | (払込保険料等×1/2)+12,500円 |
50,000円以上 100,000円以下 | (払込保険料等×1/4)+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
保険料控除は合計で最大12万円受けられます。
地震保険料控除
地震保険料は2006年から控除対象になりました。保険契約者や保険契約者と生計をともにする親族が所有する建物や、家財が対象の地震保険が控除の対象です。
家族が実際に暮らしている建物が対象です。空き家や別荘は対象外になります。
店舗の場合は住居部分のみですが、90%以上が住居の場合は全額地震保険料控除の対象です。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、共済契約の掛金を支払った場合に受けられる控除です。
小規模企業共済等掛金控除には上限がありません。掛金全てが控除額になります。
社会保険料控除
その年に払った健康保険料や介護保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、後期高齢者医療保険料などが社会保険料控除になります。
扶養家族の分を支払ったら、それも控除対象になるよ!
障害者控除
従業員本人に障害がある場合だけでなく、配偶者や扶養親族に障害がある場合にも適用されます。障害者控除額は原則として27万円です。特別障害に該当した場合は40万円、特別障害者が同居している場合は75万円となります。
特別障害に該当するかは、障害等級や指定医の判定で決まります。障害者控除には年齢制限がありません。
ひとり親控除・寡婦控除
ひとり親の人が受けられる控除です。事実婚の人は対象外となります。ひとり親控除は一律35万円の控除です。寡婦に該当する場合は27万円となります。
寡婦の要件は、「ひとり親」の対象とならず、次のいずれかに該当する人となります。
- 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 夫と死別した後婚姻をしていない人。または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 事実婚などの事実上の婚姻関係にない人
ひとり親控除と寡婦控除の違いは以下のとおりです。
項目 | ひとり親控除 | 寡婦控除 |
---|---|---|
対象者 | 配偶者がいない人で、扶養親族(生計を一にする子)がいる人(男女問わず) | 配偶者と死別・離婚した女性で、扶養親族がいない場合や所得が一定以下の子がいる場合 |
控除額 | 一律35万円 | 一律27万円 |
所得制限 | 合計所得金額500万円以下 | 合計所得金額500万円以下 |
控除の目的 | 子を養育するひとり親の税負担を軽減する | 配偶者と死別・離婚した寡婦の生活支援を目的 |
適用される性別 | 男女ともに適用される | 女性のみ適用 |
扶養親族の有無 | 扶養親族(主に子ども)が必要 | 扶養親族がいなくても適用可能な場合がある(ただし所得制限あり) |
重複適用の可否 | 寡婦控除と重複適用不可 | ひとり親控除と重複適用不可 |
勤労学生控除
勤労学生控除は、学生が一定額を超えて働いた場合に該当します。控除額は27万円です。
勤労学生控除の対象は以下のとおりです。
- 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校等に通っている人
- 給与所得などの労働収入がある人
- 合計所得が75万円以下で、労働以外の所得が10万円以下
勤労学生控除を利用すると年収130万円までは所得税がかかりません。
子どものアルバイト収入が103万円を超えると、親の扶養控除の対象から外れるため注意しましょう。親の税収が増えてしまいます。
年末調整が終わったら源泉徴収票をもらおう
年末徴収後は、会社から「給与所得の源泉徴収票」がもらえます。
源泉徴収票には、1年間で受け取った給与額や源泉所得税額、給与から控除された社会保険料などが記載されています。
源泉徴収票って毎年もらうけど使ったことないなぁ…いつまで取っておくものなの?
住宅ローンや金融機関の審査の時に提出を求められることがあるんだ
企業には源泉徴収票の元となる「源泉徴収簿」の保管義務がありますが、個人に源泉徴収票の保管義務はありません。とはいえ、当面使用の目処がない場合でも、念のため1〜2年分くらいは保管しておくことをおすすめします。
年の途中で転職した場合は、源泉徴収票が必要です。転職先の会社から提出を求められます。提出すると年末徴収を行なってもらえますが、未提出の場合は自分で確定申告しなければなりません。
退職した会社の源泉徴収票を紛失した場合は、再交付の依頼をしましょう。会社は依頼があれば源泉徴収票の再交付をしなければなりません。
再交付してもらえない場合は、税務署に「現前徴収票不交付の届出書」を提出すると行政指導が入ります。
まとめ
年末調整は、給与所得者が確定申告を行わずに正しい税額を納められるようにする手続きです。
扶養控除や保険料控除、ひとり親控除など、各種控除を正しく記入して税負担を軽くしましょう。
年末調整の書類、期限内に会社に提出しなくちゃ!
控除証明書も忘れずに準備してね!
医療費控除や1年目の住宅ローン控除など、年末調整では申告できないものは、自分で確定申告しなければなりません。
年末調整は会社が手続きを代行してくれるので便利です。仕組みを知って、控除忘れがないようにしっかり準備しましょう。
コメント